蜘蛛と角右衛門

10/11/1997

コガネグモ(雌)

延宝5年(1677年)角右衛門頼治は蜘蛛の巣にかかった蝉の様子にヒントを得て網取り捕鯨法を開発しましたが、そのきっかけを作った蜘蛛は一体どういう蜘蛛だったのでしょうか。

熊野地方では、昭和30年代(1955年頃)までコガネグモ(メス)をペットのように飼っていました。この蜘蛛は人面に似ていて、姿・色彩は美しいのですが、他のいかなる蜘蛛よりも闘争性があり、獲物が巣に進入すると蜘蛛の糸を多量に吐き出して巻き取ってしまいます。 かつては、野山より採ってきたこの蜘蛛に、家の庭や軒先で巣を張らせ、トンボや蝶を与えたりしました。秋に太鼓(蜘蛛の卵の入った象牙色の殻)を作って死ぬまで世話をしました。現在でも、九州・鹿児島地方ではコガネグモは「相撲取り蜘蛛」として飼育されており、私にも飼った経験があり、かつては熊野地方でもそのような目的で飼育されていたのでしょう。コガネグモによく似た蜘蛛にジョロウグモがあり、私の生まれ育った宇久井(和歌山県東牟婁郡那智勝浦町)では、コガネグモを「ホントウグモ」、ジョロウグモを「ウソグモ」と呼んでおりました。

角右衛門も、この蜘蛛を飼育していて網取り捕鯨法開発のきっかけを作ったのではないでしょうか。