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川辺俳句会

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12月定例句会 326回 01.12.29 山野 興仁会館
氏名 点数
小路日照 3 北風の弾となり路地射貫きたり
3 連山に斑の冬日しずもれる
1 遠山や地肌透けいて山眠る
2 父祖の田も荒れ地と化して冬ざれる
1 小春日や乙女外窓にポーズとる
西川静枝 1 着たうえに物を着て着て着ぶくれる
藁を手にこわごわ廻す子供の手
風邪のため寝間で考え指を折る
年末のせわしさ知らず寝間の中
1 星眺め一人で星に話する
梶本マサエ 1 トンネルの長きを抜けて照る紅葉
1 半身を日に射されおり長大根
1 喪中にて眼は釘付けに読み返す
純になり心せきつつ年の瀬や
同期生病むを聞くなり里師走
森  育子 1 峡の空蜜柑滑車の音走る
不老橋句友は旧きを渡りたり
2 利酒のはしごで句友は酔わされる
孫の穫る蜜柑尻高両の手に
1 明朝の仕度もたもた湯ざめして
伊奈寛雄 1 宮様の誕生師走和ませる
続く者続けと言えぬみかん採る
1 遠来の孫と浮き見る落暉中
竿並ぶ孫の横顔落暉映ゆ
1 愛子様誕生メディア一人占め
森  明里 1 飢えの子等に送ってあげたいこのみかん
1 事始め夫と福柴刈りし日を想い
4 一人居の悲哀かみしむ鍋料理
新宮の話しに花咲くみかんとり
2 冬ざれて黒ぐろ騒ぐ椎の森
尾尻宏介 2 センターライン白のみ続く冷えし夜
一人煮るおでんの湯気も温かし
みかん採り始めためらふ出来の良さ
1 迎春チラシ欲しき物無き歳となる
電飾の街樹売女となりにけり
森美起夫 プレゼント選びあぐねて暮の市
4 飛行雲端より崩れ冬日和
1 古火鉢曲れる火箸差したまま
草鎌の錆びたるままに冬ざるる
はかどらぬ鉄塔工事山眠る
山田美幸 着ぶくれて「歳のせいだ」と落胆す
しもやけを懐炉で温め畑仕事
3 湯豆腐のコトリとおどる夕餉かな
街路樹は電飾並木クリスマス
2 ジョギングの人駆け抜けて冬銀河
荊木和代 1 大根を母の教えのままに漬け
2 お互いの老いには触れず忘年会
1 湯豆腐や幸せの湯気頬撫でる
そっと置く菊一輪を野仏に
1 野仏の袂に落ち葉舞い込みぬ

11月定例句会 325回 01.11.29 山野 興仁会館
氏   名       出    句 点数
森 育子 紅葉明り白髪の老母の耳光る
日短か訛混じりの舟屋主 2
車椅子の老母身に沁む旅の空
狩の犬空の餌箱舐め尽す 1
行く秋の厨屋に結ぶ茅天井
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
山田美幸 初時雨忽然と来て惑いあり 1
母の忌や丹精の菊たっぷりと
どの墓も香りだちたる菊日和
錦秋の深きに入りて神の声 1
新米へ愛嬌ほどの零余子かな 1
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
森 明里 語り部の宝物解く手のふるえかな
白菊に囲まれ微笑む遺影かな
末枯れや真一文字の飛行機雲 3
柿落葉踏みしめ巡る文化財 1
寄りそいて支え合いつつ石蕗の花 1
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
梶本マサエ 一夜干し山家の秋や二枚買う 2
草紅葉城址に揺れて遠い景色
秋晴の青洲の里曼陀羅華 1
星ふりて山影黒き十三夜
紅葉山吾れ色まさりと装へり
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
伊奈寛雄 流星に初冬の闇間歓喜わく 2
錦秋の鉄塔雲を串ざしに 1
流星見んと防寒コート妻に急く
大和路の車窓ホツホツ柿熟れる 2
錦秋に雲鉄塔を引っぱりぬ 2
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
森美起夫 清掃の勤労奉仕神の留守 1
研ぎたての刃を恐れずに柿をむく
百舌鳥鳴くや話疲れし同窓会 2
秋深し異国の友へメール打つ
おごそかに神を送りて野良仕事
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
荊木和代 山里にピアノ響くや小さき秋
天竺を旅行へ絵画に秋日暮れ 1
小春日や嵯峨野散策去り難し
弾き手なきピアノの側で月眺む
木枯らしや喜寿を控えて友は逝く
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
尾尻宏介 土手に座す少女草の実一つ一つ
結界の櫨葉の赤き道成寺 1
街灯の球切れかけに氷雨降る
伊根舟屋海に向かいて柿干せり 2
朝寒やおはようと言う家族なし
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
西川静枝 秋の夜年老い姉妹が着物縫う
テレビ視て秋の歌出る秋景色 1
秋空に鳩のなかまがつれてとぶ
デーサービス皆な元気に秋の候
久方の秋雨にぬれて帰り道
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
小路日照 北風に抗ふ一枝初山茶花 1
誰れかれと余生を語る日向ぼこ 2
里山に日のふかふかと暮れ紅葉 2
廃屋や夕日引き寄す木守柿 2
凩のホンの挨拶雨戸鳴る 1


10月定例句会 324回 01.10.21 山野 興仁会館
氏   名       出    句 点数
森 育子 秋灯下寂聴源氏読み進む
秋祭り茶髪揃いの村っ子よ 3
柿二つ憎きカラスの見残して 1
爽やかや次男坊の声兄を越す
夫居らぬ気易さよ虫時雨
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
山田美幸 かしましき野鳥に目覚むけさの秋 1
秋天へ山脈いよよせり上がる 4
いっ時の出会いとならず草虱 1
秋祭り五反の幟差しにけり
組み伏せてようやく鹿の角伐らる
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
森 明里 秋の田で心遊ばせ句作かな 1
暮れなずむ畦道低くお茶の花 3
万物の影くっきりと満の月 3
新わらの香にさそわれてボランティア 1
名月やお化けのような山の影
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
梶本マサエ 秋祭り老斑の顔笑みやまず 3
脱穀やぐいっと喉に茶を流す 2
唖ー唖と塒に帰る秋茜
どんと打つ祭り太鼓や秋の空
学生の横笛きりり獅子の舞
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
伊奈寛雄 老農の怒声届かざり稲雀 3
体隠し声あびせくる法師蝉 2
キャンプ過ぎ元のせせらぎ帰り来る 1
人幟互いに反りて力くらべ 1
山あいの句会に届くならし笛 1
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
森美起夫 飛行雲きれぎれになり百舌鳥高音 1
仏前に供へて今日の茸飯
雨足も早足となり秋の暮れ
いが栗の山なすところ山の道
教え子の顔みな赤し囲炉裏端
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
荊木和代 素通りは出来ず落柿舎柿赤し 1
耳元に羽音感じる秋の蚊や 1
好物の栗飯供へる母の忌や 1
藁屋根をのぞけば背戸に通草落つ
初紅葉残照さした奥嵯峨野
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
尾尻宏介 一群のコスモス育て寡婦の庭 2
生の杭刈田に打ちて幟立て
男一人地に寝ころびて天高し 1
一人で見てるとメールの届き満の月
秋霖やテントの中の露天商
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
小路日照 艶やかな縞くねらせし穴まどひ 3
シュークリーム崩れ膝して秋談義 3
夜霧さす習し太鼓のひびく里 1
飛行機の光渡り行く涼夜かな
ハイキング落とし水澄み音も澄み 2
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
西川静枝 新宮の秋の大祭おごそかに 1
晴れた夜星きらきらと語りかけ
句会日が明日に来るのに句にならず
秋の山行く先々の紅葉かな
明月にススキ供えて手を合す


 9月定例句会     323回   01.8.28     於 山野興仁会館

   今月の高点句

      7点句  刈田跡無用の案山子ゴンと寝る     和代
      5点句  ゆたゆたと舟屋に籠る残暑かな    美幸


       伊奈寛雄
           鈴虫の窓より届き長湯する
           斑猫に誘われいつしか遠散歩
           土厚いき屋根に夏草水師営
           会見を偲びし棗炎に枯る
           炎天下暗き土間なる会見席

       森  育子
           蕎麦の花カニ食い下手の紀州人
           猪垣を車窓に捕らえ北陸道
           ひつじ田の真中おわす芦原の湯
           冷房もてすいせんに花越前村
           孫の足からめてうとうと彼岸来る

       山田美幸
           ゆたゆたと舟屋に籠る残暑かな
           運動会平和に並ぶ万国旗
           店頭の松茸元へ香りだけ
           新涼や箒目深き寺の庭
           秋風や檜皮の寺を鋭角に

        森  明里
            さるすべりホーム入居の友想ふ
            運動会あの子もこの子も人の孫
            つなひきや力む顔顔旗の下
            運動会びりっこになほ大拍手
            レロニュース夜長そのまま明けにけり

       梶本マサエ
            万国旗秋風に揺れ運動会
             秋彼岸夫の墓へと供華を手に
            草むらは虫の演奏競い鳴き
            独唱は背戸の闇よりくつわ虫
            声の似て夕餉の支度秋茜

       荊木和代
          干梅の塩きらめかせ樽仕舞う
          露天湯に木もれ日さして蝉の声
          黄金の果実夢見て摘果する
          刈田跡無用の案山子ゴンと寝る
          農衣洗う摘果みかんは機で廻る

      尾尻宏介
            人気なき狭霧流れる平家村
          ダム湖面芥溜まりや秋に入る
          稔田を抱き熊野の山ゆたか
          新道行く同じ速度のコンバイン
          真新し軍手と鎌もち刈り始む

     森美起夫
         気を付けの姿勢で並ぶ秋刀魚かな
         陶を焼くかまどの煙秋高し
         とんぼうの止まりて見上ぐ広き空
         葡萄売る看板あれど売り子居ず
         前触れの雷鳴あれど雨の来ず

     西川静枝
         テレビ視てふと句の浮かぶ秋夜中
         秋みのり雨風嵐の難をぬけ
         日没を座りてながむ青き芝
         虫おくり村のはずれの鐘木魚
         旅の先黄色き彼岸花に会う

     小路日照
        蝙蝠の浮き立つ飛翔遠茜
        夕闇の月横切る蝙蝠幾つ
        あかあかとあかあか土手の曼珠沙華
        鵙の声青空に透く朝の刻
        天高し嬰の全身力泣き




                   

          8月定例句会       322回  01.8.27   於 山野興仁会館 

                今月の高点句
                  4点    球児去る背なの広さや秋立ちぬ  美幸
                  3点    炎昼に野仏の入る陰もなし     マサエ
                  3点    古寺の庭今を限りと蝉の声     寛雄
                  3点    浴衣着てつま先ピンと孫の足   育子
                  3点    亡き子と見し今年も聞く遠花火   宏介

                小路日照
                    大洋に烏帽子の背鰭夏鯨
                    白桃の甘さが覚ます少年期
                    魂棚は故人の植木鉢の中
                    寝返って又寝返って熱帯夜
                    炎天の湯ノ川に生く青藻かな
                伊奈寛雄
                    空仰ぎ皆口開けて揚げ花火
                    古寺の庭今を限りと蝉の声
                    果樹園に麦藁帽子かげろへり
                    背を伝う汗幾筋と通夜の席
                    炎帝をにらみて気力摘果する
                尾尻宏介
                    街の川納涼船の空騒ぎ
                    子等帰る水着の重さの疲れ持ち
                    時折は潮騒聞こゆ海女の盆
                    亡き子と見し今年も聞く遠花火
                    父は享楽4年目の子の霊迎ふ
                森  育子
                    浴衣来てつま先ピンと孫の足
                    ジョークまた今宵の花に夏の宴
                    還暦の眼差し熱き同窓会
                    朝涼や無心に動く摘果の手
                    帰省子と仕事分け合う至福かな
                西川静枝
                    大風が来るというのに鳩平気
                    むつみ会夏の研修富田にて
                    揚げ花火大きく開く我が口よ
                    一つ星見つけて夏の空高し
                    風呂浴びて涼みがてらに子と花火
                梶本マサエ
                    迎え火や母より老いて帰り待つ
                    雨足に目覚めて聞き入る音すがし
                    家路へとたたみし合歓の花の下
                    炎昼に野仏の入る陰もなし
                    目張り寿司一人一個の夏の空
                荊木和代
                    炎天下僧一人ゆく棚の行
                    宵闇を照らす松明魂送る
                    炎中の遍路に接待冷麦茶
                    遍路行く鈴の音と共玉の汗
                    葡萄畑猿追う声で明けて行く
                森  明里
                    青田風想いははるか亡夫のこと
                    熱帯夜夢にも出てこぬ亡夫かな
                    小水も我が田に流せ大旱
                    ハートマークの娘もいて焼き肉なお熱し
                    ビオトープ過疎の木陰の立て看板
                山田美幸
                    球児去る背なの広さや秋立ちぬ
                    秋風よ探してはいる登廊段
                    勝負球決めたる投手の目の強さ
                    薄衣のシュルシュルゆるる樺風

                      若者の腰より見せる日焼けあと
                     

           7月定例句会        321回 01.7.28   於 山野興仁会館

                       今月の高点句
                       3点   神輿担く鬢の流れし八頭身    日照
                     
   3点    滔々と一木流す梅雨出水     日照
                       3点   峡の宿闇ふるわせて河鹿鳴く   育子

                       3点   螢まつり峡の首長声はずむ    明里
                       3点   夕涼み女教師も足を組み      明里
                       3点   梅雨茫々廃舟にまだ雨たまる   宏介

山田美幸
    猪垣の電柵抜けゆく青田風
    山紫陽花沢より放つ瑠璃明り
    呼び合ひて濃霧の巌を捩る攀じ登る
    雲海を槍の矛先突き抜ける
    山小屋の膳に岩魚の睨みいる

森 育子
    峡の宿闇ふるわせて河鹿鳴く
    孝行の文字涼しげや母老いて
    炎帝に抗らがふ元気我六十
    連日の本で夜更かし熱帯夜
    月一の集い待たるる夏句会

伊奈寛雄
    今日一のショット緑に吸い込まる
    田植機のSPなりや鷺六羽
    だんだんに声落としけり昼寝見ゆ
    太き指大き爪見せ老農昼寝
    大き足框に見せて老農昼寝

森 明里
    野うさぎの輪禍にあいて蛍の夜
    螢まつり峡の首長声はずむ
    目にしみて口にしょっぱさ汗の玉
    一株のなすび育てる若世帯
    夕涼み女教師も足を組み

梶本マサエ
    梅雨時間千古のなぎや凛と立つ
    絶景の枯木灘行く夏の風
    大波の恋人岬雲の峰
    谷渡り唄う老鶯友を呼ぶ
    空蝉の葉裏をしかと抱えいる

西川静枝
    朝がすみ向こうの山も朝がすみ
    蝶々がいまだ頭上で遊びいる
    文月と書かれし暦句にならず
    テレビ視て句になりそうと指を折る
    おばさんとまたも炎暑の話する

尾尻宏介
    梅雨茫々廃舟にまだ雨たまる
    虹かかる前に直立高層ビル
    川幅に梅雨の流せる最上川
    足重き家路に咲ける月見草

小路日照
    山桃の野性味深し舌の上
    滔々と一木流す梅雨出水
    土用入り妻は留守にて粗の食事
    神輿担く鬢の流れし八頭身
    月涼し照らす駅舎の灯影より

荊木和代
    風鈴の音をたるます暑さかな
    明け易き燕巣籠に餌を運び
    大社殿お払い受ける薄暑かな
    十薬茶喉潤すや老夫婦
    明易き漁船出ていく熊野灘




         6月定例句会  320回  01.6.28  於 山野興仁会館

                    今月の高点句
                   4点    通夜読経一匹ホタル迷い来し   寛雄 

  
                            

小路日照
    親鳥の声もて巣立ち軒雀
    機械植早乙女補植毛付け終ゆ
    花菖蒲格花に活けて身を正す
    梅雨寒の客をもてなす濃茶たて
    父祖の村入れば匂える花みかん

尾尻宏介
    乳形の願かけ黴し歳二十
    絡みからみて一瞬の直蛇の交
    サービスエリア軽口たたく梅雨売り女
    梅雨晴れ間山寺の巌乾かざり
    蚤の宿梅雨の敷き藁乾きしまま

梶本マサエ
    夜の闇にすさまじき音土蛙
    夫婦二人田植えの苗放る音さみし
    雨含み花毬重たき紫陽花
    毛付け休み夫が又して大あくび
    明滅の闇を流れし大蛍

西川静枝
    句座せまる夏至の句いまだ整わず
    アガパンサス友の来たりて句にならず
    梅雨日和乾きし道に句を探す
    毛付け休み色濃きヨモギ餅つけり
    春病院優しき言葉かけられし

山田美幸
    衣更岸に脱皮の蛇の皮
    梅雨晴れ間隣も布団叩く音
    初狩りの子燕とんぼ持て余す
    黒南風や真妻の峰も低く在り
    人物をぼかして撮れり山紫陽花

伊奈寛雄
    横綱の鬼形相の千秋楽
    薬散のエンジン一斉梅雨晴れ間
    白鷺のつきいる水田のトラクター
    新妻が大きい息吐き水田に入る
    通夜読経一匹ホタル迷い来し

荊木和代
    梅雨空や留守番電話に孫の声
    紫陽花の紫煙る山の寺
    五月雨を眺めて茶粥吹きこぼれ
    梅採りや梅の香りに一日暮れ
    あちこちに蜘蛛が巣かける廃野小屋

森 育子
    梅雨晴間木の濡れしまま棟上がる
    知床は地の果てにして明け易し
    スニーカの老女に薫風島巡り
    摩周湖の一瞬の顔霧流る
    5月闇イヤに気になる染め毛の黒






5月定例句会  319回  01.5.28  於 山野興仁会館   

今月の高点句
 4点   ステージは漆黒の谷ホタル舞う     寛雄
 3点   植木市夫婦で掛け引き裏会式      日照


 

小路日照
杣道のくねりて奥に緑さす
植木市夫婦で掛け引き裏会式
金魚掬い1尾すくいて母仰ぐ
老いて尚情熱欲しや鐘供養
黄の牡丹かすかに残す基の紅
森 育子
病み猫をなだめて初夏の旅に出る
夏富士ニ手の届きそうな裾泊リ
還暦の輪ノ中今も少女ぶる
五月富士ふり向いてまた振り返る
山若葉軽き身支度旅上手
西川静枝
    我が家の窓より眺む木の青さ
    曾孫には久しく会わず春すぎる
    ウグイスの歌い初めか青葉ゆれ
    退院す春のぬくもり床にある
    病みみて人の情けの春日暮れ

尾尻宏介
    花みかん朝のチャイムが鳴っており
    母の日や葱刻む音懐かしき
    興味本位の噂も薄れ四度目の梅雨
    口紅の濃きソロの歌手梅雨の底
    豌豆畑婦ら見えねども姦しく

伊奈寛雄
    音の無き音符の上下群れ蛍
    ステージは漆黒の谷ホタル舞う
    群蛍我も蛍に息合わす
    子等の眼を集めて水面ホタル飛ぶ

山田美幸
    登り尽き五月の大峰欲しいまま
    新樹道六根清浄響きけり
    春野行く地ビール蔵の見ゆるまで

森 明星
    端居してぼんやり見つめる糸の雨
    夫遺す庭木の松の緑摘む
    新緑や子犬もいだかれ車窓より
    夜半の夢不意に遮る初百足
    凛と咲き鎌に逆らうあざみかな

荊木和代
    深紅のバラの門柱コーヒ飲む
    万緑に一筋光る那智の滝
    鯉のぼり竿直角に泳ぎけり
    小包を開ければ日傘母の日や
    薫風に乗ってドライブ紀伊の嶺

梶本マサエ
     ブランコに幼き声が揺れいたる
     葱坊主羽音わきたつ蜂の群
     散る花にかつて吉野の花思う
     朝の膳香りかすかに豆茶粥
     筍の堅さ確かめ五目飯

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