小金を借りている男、借金とりが来る度に居留守を使う。ある日も例によって留守だと言ったが、その声は確かに本人なので、
「現にいるのに、なぜ留守だというのだ」
「いや、私は親戚の者だ」
と言い張る。
そこで借金とり、窓の障子に穴をあけて中を覗いてみると確かに本人なのだが、借金している男は腹を立てた。
「あれっぽちの金で、俺の城廓を壊すとはなにごとだ。ちゃんと修繕しなければ払ってはやらぬ」
借金とりは仕方なく、早速穴をふさいだ。
そしてまた催促すると、中から言う。
「見えるかい」
「見えなくなった」
「ならば、やっぱり留守だ」
河出文庫 「中国のユーモア」寺尾善雄より |