近畿社会科研究大会


第6学年(第5学年との複式学級)

多地点接続テレビ会議システムによる交流学習

―日本列島縦断何でも交流プロジェクト―

和歌山県高野町立富貴小学校教諭 坂本八十八 

T はじめに

富貴小学校のような小規模校(全校児童24名)では,多くの友達と意見を交換する機会が少ないので,自分の考えを整理し相手に正しく伝えることが苦手になってしまう。また,山間の僻地なのでいろいろな地域(例えば,海のある町,文化施設が数多くある都市など)へは頻繁に出かけることがでにくい。

そこで,1999年度より「日本列島縦断何でも交流プロジェクト」と題して,秋田県・静岡県・和歌山県・京都府・島根県・宮崎県の小学校と交流学習をすすめている。これまで「地域の特産品」調べと「米づくり」などについて電子掲示板やメーリングリスト,テレビ会議システムを使って,交流学習を行ってきた。「米づくり」交流学習では,シカやイノシシの侵入を防ぐために電線で田を囲っていること,農薬散布にリモコンヘリコプターを使っていることなど,富貴にない情報を興味深く聞くことができた。

学期に1回ずつ多地点接続テレビ会議を行い,それぞれの地域の様子や総合的な学習の取り組みを交流している。また,京都への修学旅行を利用して京都府の小学校とオフラインの交流会もできた。テレビ会議でしか会ったことのない友達と直接会って,自己紹介と地域の紹介をかねて特産品などの交換を行った。

  これらの交流学習をとおして,コミュニケーションする楽しさ,地域を見つめ考えたことなどを交流校へ伝えることの大切さを少しずつではあるがつかみつつある。同時に,交流校の友達によく分かるように表現する難しさも意識できるようになってきた。


U 研究の視点

地域の生活やそこで生きる人々の姿を見つめ,地域のよさや課題を見出し解決する。そして,他地域との比較を通して共通する課題やその地域独自の課題に気づき,新たな課題追究へと発展させていきたい。

1 子ども達につけたい力
(1)   課題を見出し,見通しをもって解決しようとする力

(2)情報発信する力

(3)さまざまな人々から学ぶ力


V 研究の実際
1 単元 古くからつづく手づくりの工業

2 単元目標

わたしたちのくらしのなかで使われている伝統工芸品や,手づくりの製品を調べ,それがわたしたちのくらしと深いつながりをもち,生活を支えていることに気づく。

4 指導にあたって

(1)児童の実態

これまで少人数学級で過ごしてきた子ども達は,テレビ会議をはじめて行ったとき,緊張のあまりほとんど話せなかったりうまく表現できなかったりして苦労していた。また,日常の学校生活を紹介する電子掲示板へ書き込みをするときも,1人では不安らしく必ず数人で相談しながら文章を考えていた。何を書いたらいいのか分からず,教師に頼ってくることも多かった。

1999年度より「日本列島縦断何でも交流プロジェクト」と題して,秋田県・静岡県・和歌山県(美里町)・島根県・宮崎県の小学校と交流学習をすすめている。これまで「地域の特産品」調べと「米づくり」について電子掲示板やメーリングリスト,テレビ会議システムを使って,交流学習を行ってきた。「米づくり」交流学習では,シカやイノシシの侵入を防ぐために電線で田を囲っていること,農薬散布にリモコンヘリコプターを使っていることなど,富貴地区にない情報を興味深く聞くことができた。共通点として後継者不足があることもよく分かった。これらの交流学習をとおして,コミュニケーションする楽しさ,地域を見つめ考えたことなどを交流校へ伝えることの大切さを少しずつではあるがつかみつつある。同時に,交流校の友達によく分かるように表現する難しさも意識できるようになってきた。

(2)教材について
 富貴地区には,「檜紐(ヒノキひも)」や「薄板(うすいた)」「しゃもじ」など木材を使った手づくり工業製品がある。昨年度,「薄板」を取り上げた。もともと「竹の皮」の代用品として考案されたものである。富貴地区では,戦後,近くの山林にあった赤松を利用し,生産が始まった。納豆などを包んだり寿司のねた敷きにしたり,主に食品関係に使われている。ビニル製品に押されて生産量が減少時期もあったが,「薄板」には殺菌力があり環境にやさしいことから現在では安定した需要がある。そこで,今年度は,「薄板」と関連が深い,「檜紐」調べに取り組むことにした。檜紐とは,ヒノキを紙のようにうすく削って,ひもにしたものである。高級なお肉やお饅頭を薄板で包むとき檜紐として使われている。今後,環境問題をテーマにした総合的な学習への発展も検討していきたい。
 全国各地に手づくり工業があり,それらは今も私たちのくらしに役立っていること,大切に育てられていること理解するために,交流校から「茅葺き民家」(京都府美山町)を取り上げてもらう。同時に,総合的な学習への発展を視野に入れ,「万葉時代の食事」(静岡県浜北市)・「加茂の未来はこうなるかもプラン」(島根県加茂町)・「村に伝わる『山の神』『川の神』」(宮崎県西米良村)の発表を4地点接続テレビ会議で行う。

5 指導計画 全11時間

第1次 富貴地区・檜紐調べ 6時間

    第1時 檜紐調べについての学習課題

    第2時 檜紐づくりの見学

    第3時 檜紐の原料について

第4時 檜紐の作業工程について

第5時 労働の苦労や喜びなどについて

     第6時 学習課題についてのまとめ

第2次 多地点接続テレビ会議システムによる交流学習 5時間

    第5・6時 地域の手づくりの工業などについてテレビ会議を使った交流学習(本時2/2)

    第7・8時 4地点接続テレビ会議での交流学習

    第9時   まとめ

6 評価の規準

7 本時の目標

他地域(京都府)との比較をとおして手づくり工業で働く人の苦労や工夫などについて理解を深める。

8 本時の展開

学 習 活 動

支 援

評 価

1 地域の手づくり工業について質疑応答をする。

2 各地の手づくり工業の歴史や働く人の苦労や工夫など発表する。また,交流校からの発表を聞く。

 <檜紐について>

  • 檜紐とは,ヒノキを紙のようにうすく削って,ひもにしたものである。
  • 高級なお肉やお饅頭を薄板で包むとき檜紐が使われる。
  • 鉋(かんな)の秘密
  • 40年前,100人ほどの人がヒノキを削っていた。現在は,10人足らずの人に減ってしまった。
  • 最近,檜紐が売れなくなってきたので,見学に行ったところでも冬の間だけ作っている
  • 後継者がいない。 

       たばねる1

ヒノキを削ったものを束にしている

3 発表について話し合う

  • 手づくり製品がくらしに役だっているようすを話し合う。
  • これからの手づくり工業について考える。
  • 手づくり製品のよさについての話し合いは、事例をあげて具体的にイメージを深める。

<茅葺き民家について>
むかしの人は、大野にある自然のものを使って工夫してくらしていた。

・土間の土・天じょうや山水を引く竹・すぎの丸太・わらひも・板・かや・いろりやかまど・牛

4 学習のまとめをする

前時,手づくり工業についてその概要・製造工程や材料などについて情報交換を行った後,出された質問について分かりやすく説明するために写真や実物などを用意する。

かんな1

節のないところを削るので刃が1枚であり,軽くて仕事がしやすい。傾きがゆるいと,削ったものがまっすぐ出てくる。

かんな3

節などを削るときに刃を押さえるためにもう1枚小さい刃がある。大工さんの鉋で削るとくるくる巻きながら出てくる。

富貴地区の檜紐との共通点や相違点など考えながら各校の発表をメモしながら聞くようにする。

350年前からある茅葺きの家で,重要文化財になっている。

各地の手づくり工業ができた理由から,それぞれの地域の特徴を考える。また,働く人の苦労や喜びなどから共通点を見出すようにさせる。

・交流校の説明を聞いて理解を深めることができたか。

・檜紐づくりの苦労や工夫を実感するために,ヒノキ削りを体験したことを発表させる。

  • 思ったより力が必要なこと,削ったものがひもように長くなりにくいことなどが分かりました。
  • おじさんが削った後のヒノキに触ると,つるつるして気持ちよかったです。














































日本各地にある手づくり工業について関心をもつことができたか。

W 研究の成果と課題

(1)1学期の4地点接続テレビ会議で他校から実体験の大切さを学んだので、今回はヒノキを鉋で削る体験をした。職人さんが削ると簡単そうに見えるのだが、実際に削ってみると大変むずかしいものであった。このヒノキを削っている様子をデジカメの簡易動画(mpeg1データ形式)で撮った。動画で撮ることで鉋の動きとその削られる音までも記録できた。その後、この動画データを見た交流校から「こんふうに削ったものが、クルクルと巻き込まないのは凄いなあ」という感想をいただいた。大工さんを父にもつ先生ですから鉋で削る様子をよく知っていたのだった。交流校から富貴小では気が付かなかった点を教えていただき,再度、鉋について調べ直した。その結果、大工さんが使う鉋と違って、檜紐づくりに使う鉋は刃が1枚であること、刃の傾き(角度)が小さいことが分かった。「鉋のヒミツ」という題名でホームページにデータを追加した。テレビ会議実施については,教師間での事前の打ち合わせが重要であることを学んだ。

(2)テレビ会議による交流学習は,子どもたちにとって,自分たちが住んでいる地域を見直し,調べたことを遠隔地の友達に分かりやすく伝えるための学習の場となる。テレビ会議では,多種多様な質問や感想が交換でき,地域にはその地域にある材料を生かして生活に役立てるための手づくり工業があることを具体的に知ることができ,発表に対する交流校からの感想が励みとなり,質問が新たな課題を見つける契機となったそれぞれの地域で手づくり工業に携わっておられる方々の思いや願いを共有することができた。

(3)総合的な学習についての4地点接続テレビ会議の成果<メーリングリストより一部引用>

小川・白井@伎倍小です。 今日はありがとうございました。 どの学校もすばらしくまとめられていてビックリしました。 質問などの交流もたいへん盛り上がりましたね。 これからの励みになりそうです。 いろいろ質問していただいたのに、うまく答えられなくてすみませんでした。 少し補足をさせていただきます。

まず三角縁神獣鏡ですが・・・ 4世紀後半のもののようです。浜北市内の古墳から出てきました。もう少し詳しく調べて、またお知らせしたいと思います。

若槻@加茂小です。昨日のテレビ会議ありがとうございました。

>>まず三角縁神獣鏡ですが・・・

>>4世紀後半のもののようです。浜北市内の古

>>墳から出てきました。もう少し詳しく調べて、またお知ら

>>せしたいと思います。

ありがとうございます。加茂の三角縁神獣鏡は、「景初三年」の銘があって、いわゆる卑弥呼が魏からもらった100枚の鏡の一つと言われています。日本で確か3例しかないとか・・・。三角縁神獣鏡はいくつも例がありますが・・・。 伎倍小さんから事前に送ってもらった資料を見ているときに、三角縁神獣鏡を見て,みんなが驚いていました。

こんにちは,村所小の多田です。どの学校も,さすがすばらしい発表でしたね。 うちの子達にもとってもいい刺激になっていたようです。 うちの子達は,5年生だけとなっていますので, テレビ会議の後,「先生,鏡って何ですか?」 という質問が多く,説明をしたところでした。 みんな 「ほ〜」 といって,他の学校のすばらしさを改めて実感しているようでした。今回,本校に 「自然を大切にするってどんなことをしているのですか?」 という質問をいただきました。 本当にありがたい質問でした。 子供達とも「こんな質問が出たらどうしよう」と話していたところです。 この質問のおかげで,こらからの課題が子供達にも発見できたと思います。 3学期は「西米良の自然を守るためにみんなでにできることは何か」 という課題のもと学習が進められそうです。 本当にテレビ会議ありがとうございました。 またよろしくお願いいたします。

第2回テレビ会議では「三角縁神獣鏡」が加茂小学校(島根県)と伎倍小学校(静岡県)の共通テーマとなり,質問や感想などで盛り上がった。また,村所小学校(宮崎県)と富貴小学校(和歌山県)の間では,環境問題が共通のテーマとなった。

<静岡県浜北市伎倍小学校・島根県加茂町加茂小学校・宮崎県西米良村村所小学校>

(4) テレビ会議でのプレゼンテーションやホームページ作成など,調べたことを的確に文章表現したり,状況を分かりやすく伝えるために動画を使ったり,今後さまざまな工夫をする必要がある。また,教科指導と関連させながら地域をもとにした教材を開発し,総合的な学習へと発展できるようにしたい。

back