コンピュータ教育カリキュラム細案  
−ワープロ活用編−


’96/05/01 改定版 高野町教育研究会コンピュータ部


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コンピュータ教育
カリキュラム案
コンピュータ教育カリキュラム細案
−ネットワーク社会におけるデータベース活用編−



0 はじめに
 
文章そのもの,文章に図形・表などを取り入れたプレゼンテーション作品をつくる場合,日本語フロントエンドプロセッサ(FEP)を使って,漢字かな混じり文を入力する。文章そのものを作成するには,「何について書くのか,どんなふうに書くのか,書くべきものについての構想を立てる場面」「書きたいことを文章にする場面」「書いた文章を推敲する場面」がある。メモをもとに構想を立てるには,これまで先人が開発してきた,こざね法・壁法・KJ法・ブレーンストーミングなどある。これらの方法と合わせて,データベース利用も考えていきたい。これまでの作文メモをデータベース化しておく。例えば,生活作文では,「いつ・どこで」などの5W1H,特に楽しかったこと・心に残ったことなどを記入した項目別のデータベース・カードを作成する。何枚かのカードが蓄積できれば,一覧表を見ながら構想を練ったり,キーワードをもとにカードを検索したり,様々な活用法が工夫できそうである。
 日本語入力は,コンピュータ教育の基礎・基本となる。紙と鉛筆を使うのと同じようにコンピュータを使えるようにしたい。プレゼンテーションは,この日本語入力にグラフィック等を加えたものとなる。この「コンピュータ教育カリキュラム細案−ワープロ編−」(以下,細案と略す)では,日本語入力機能の概要とその活用法について実践指針を提案する。高野町内の各小・中学校において児童生徒の実態に即し,この細案をもとに具体的な方針と計画を立て,コンピュータ教育を推進してほしい。

1ワープロ活用の意義
 文章を書くためにワープロを徹底的に操縦する意義を,木村泉氏は,「ワープロ作文技術」(岩波新書)で「構想を立てる」,「書きおろす」,「磨く」という作文のプロセスにおいて解き明かしている。ここで,まず,文章を書き出す準備段階である「何を書くか」,そのアイディアのたぐりかたを紹介した部分を引用する。

 アイディアとは,その地底湖にたまったおいしい水である。自分の文章を書こうと思ったら,それを汲み出さなければならない。または,アイディアとは地底湖に住むお魚だ,といってもいい。お魚にたとえるなら,それをどう釣り上げるかが問題である。
  困ったことにこの地底湖,中が見えない。汲み上げるには細いパイプから汲み上げるしかない。釣り上げるには,小さい穴からそっと釣り糸を垂れ,お魚がかかるのを待たなければならない。じわじわと,だましだましやらなければ駄目なのだ。(P17〜P18)

  幻の傑作がちらと思い浮かんだら,どうすればよいか。ワープロにスイッチを入れて,第1章第1節から書き出す,というのでは全然駄目である。それではまるで,魚影がちらと見えたとたんバチャーンと水に飛び込み,むやみやたらにその辺をかき回すようなものだ。猫並に敏速にやったとしても,捕れるのはせいぜい小魚一尾がいいところだろう。仲間の魚はみんな逃げてしまう。
 思いついたときその場で思いついた範囲のことを書きおろす,というのがコツである。差し当たっては紙に走り書きをするとよい。ワープロは起動に時間がかかるし,どうしても多少音がするからお魚が逃げやすい。釣りが本格的にはじまってしまえば音などまったく気にならなくなるものだが,そうなるまではひょいとその辺に転がっている,しかも音のしない紙の方がずっといい。(P25〜P26)

 このように,文章を書くには随分苦労する。文章を書く前からよく練っておき,いきなり初めから書きおろせればよいが,うまくいかない場合が多い。とにかく書きたいことを簡単な文にまとめていく。思い付くまま気軽に書き込みを増やしていく。付け足すことがあれば書き足していき,中身をふくらませていくようにする。共通する文があれば一つの段落としてまとめていく。なかには削除したり書き直したりしなければならないときもある。編集が手軽にできるワープロだからこそできる文章作成方法である。ワープロをうまく活用する。
 「アウトラインプロセッサ」というソフトを使えば,段落の一行目,節の表題だけを表示し,文章全体を見渡し,足りない部分がないかどうかを検討することができる。また,編集も行なえるので,文章の校正がしやすい。最近のワープロソフトは,思考のツールとしての機能を備えつつある。入力変換中に文体の不一致や,ら抜き表現の使用などをチェックする校正支援機能がある。構文の意味を解析し,長文や同音異義語の正しい変換効率を高める工夫もなされている。
 文体上の疑問点,例えば受け身形などを指摘する専用ソフトもあり,容易に文章チェックができる。ワープロ活用の意義をまとめた部分があるので,再度「ワープロ作文技術」から引用する。

一,汲み上げたアイディアを,紙ではなく画面に書くことができる。画面は修正しようと思えば跡形もなく修正できるから,他人に見られてとやかくいわれる恐れも,自分で見ていやな感じになる恐れも,ずっと少ない。

二,アイディアを汲み上げるとき,(キーボードに慣れてくればだが)波の立ちかたがずっと軽微ですむ。たとえば「軽微」は全部で二五画ある。楷書で書けば二五回の運筆を必要とする。草書で書いても,その半数ぐらいの動作は必要だ。身体を動かせば動かすほど,頭の中に波が立つ。ワープロだったら,たとえば「Keibi<変>」の六動作で間に合う(ローマ字打ちを想定,<変>は変換キーの打鍵)。《原文では変換キー打鍵の記号は「変」を正方形で囲ったものだったが,ここでは<変>とした。》
変換結果を目で見て確認する,というところを一動作と数えてすら七動作で済む。ずっと静だ。

三,文章を磨くとき,頭の中で暗算をするのよりずっと誤算が少ない。確実に推敲ができる。一度変更したあと,あ,しまった,さっきの方がよかった,と思ったときにも,(変更前の文章をフロッピーやハードディスクに保管してあれば)さっともとに戻せる。だから安心して,画面上で実験ができる。(P20〜P21)

 
  的確な情報をもとに意志決定をしたり課題解決をしたりするためには,多くの人々と関わりながら多種多様な価値などに触れることによって,情報の真偽や本質的な価値を見抜く力を付けなければならない。
 コンピュータを使うことによって膨大な情報を蓄積することができる。そして,その情報がデジタル化されているので,文字・映像・音声などを統合的に管理でき,検索しやすいのが特徴である。インターネットを使えば世界的な規模でのコミュニケーションが可能となる。従来の「手紙」に変わって「電子メール」を活用することが多くなっている。電子掲示版は,一対一だけでなく,一対多,多対多のコミュケーションを実現している。このようにコンピュータネットワークは,コミュニケーションの在り方を一変させた。自分の考えや意見などを的確にまとめ他へ確実に伝えることは,高度情報化社会においてますます重要となる。学校教育においては,豊かな表現力を育成していきたい。
 学校ワープロ調査研究委員会(委員長・坂元昂氏)が,1986年4月から19 91年3月までの5年間,関東と関西地方の小学校11校と中学校3校に対して小・中学生のワープロ活用に関する調査研究を行なっている。主な結論は,以下の通りである。
@子どもたちのワープロ利用は,国語ばかりでなく,社会,理科などの学習活動に広がりと深まりをもたらした。
A子どもたちがコンピュータを道具として使うことに自信をもつようになった。しかも,ふだん低い学力とされてきた子どもたちも例外なくコンピュータを使いこなせるようになり,学習活動に対して新たな興味と関心を高めることができた。
B小学校5年,6年までの段階では,学習意欲を喪失してしまう子どもたちがいた。したがって,その前の段階の3年・4年からワープロを取り入れることも考えなければならない。

  紙と鉛筆を使った作文であれば,習った漢字を思い出しながら一画一画書かなければならない。その上,間違いの訂正は消しゴムを使い,紙を破らないように気を付けなければならない。そして,文章の推敲が終わり完成に近づくと,清書という仕事が待っている。
  ワープロを使えば漢字変換・修正・清書などの部分でかなりの労力が省ける。それだけ構想を練ることに専念できる。作文嫌いも克服できそうである。

2ワープロ機能の概要
(1)入力機能
@いろいろな文字や数値,記号,単位などを入力できる。
Aローマ字やかなで入力し,漢字に変換できる。変換方式には,一つ一つの漢字を変換する「単漢字変
 換」,かな漢字混じり文を変換する「連文節変換」などがある。
B任意の文字や記号などを作成して入力できる。 (外字作成機能)
C罫線が作れる。(罫線機能)
(2)編集機能
@文章の修正・変更などの編集ができる。(複写・移動・中央寄せ機能など)
A文字などの装飾ができる。(文字サイズ,下線,網かけ機能など)
B特定の言葉を検索したり置換したりできる。その他,文書の特定部分へジャンプする機能などがある。
(3)印刷機能
@印刷する前に印刷時のイメージやレイアウトを見ることができる。
A紙の大きさ,空白の設定,印字方向,文書名やページ数の自動印刷などの書式が設定できる。
B作成した文書を様々な書体できれいに印刷できる。
(4)保存機能
@作成した文書をフロッピィディスクなどに保存することができる。
A一度保存した文書は,必要に応じて変更修正して再度利用することができる。データコピーは何度でも
 簡単にできる。

3ワープロ活用例
(1)基本的な活用方法
 実生活との関連において既習事項を整理し,さらに深めたい課題を見出す,それらの成果をコンピュータ等を活用して表現したい。その際,ワープロによる文章表現,グラフィックによるビジュアルな表現などを組み合わせたい。具体的な取り組みとして,HYPERcube2などの統合ソフトを活用する。
 このHYPERcube2には,ワープロ・表計算・図形処理・データベース機能が統合されており,それぞれのシステムで独立したデータを作成することができる。
 これらのデータはシステム間でつながりを持っている。グラフィックデータや表計算データなどをワープロ文書に取り込むことができる。例えば,植物の観察記録にスケッチまたは写真を画像データとして取り込む。気温や降水量を表に整理し,最大値・最小値・平均値などを計算したものを取り入れた文書も簡単に作成できる。ワープロ・表計算・図形処理・データベースそれぞれの特性を生かした情報処理を行ない,必要に応じてデータを共有することができる。
  コンピュータは,豊かな表現力によって子どもたちがイメージしていたものをより正確に提示できる。コンピュータ画面に提示されたものと,表現しようとしていた自分の考えや意見などを,客観的に比較検討することができる。読み手の目で文章を見る,自分の文章を突き放して他人の目で見る,このような検討方法が大切である。そして,これが新たな発想を生み出す契機ともなる。他の人にもよく分かるように伝えようすることで,筋道を立てて考えを整理し,深めることができる。文章作成でコンピュータのワープロソフトを使えば,文の複写,削除,移動などがスピーディに行なえるので,思考を中断することなく,叙述に専念することができる。
  子どもたちは考えや意見などをまとめるとき,文章表現する必要がある。また,どのコンピュータソフトを使うにしても日本語入力が必要な場面がある。入力した文字を漢字変換する方法,入力文字の訂正など,日本語フロントエンドプロッセサ(FEP)の基本操作をまず習得するようにしたい。
(2)指導展開事例
  ワープロに限らず原稿用紙に作文を書く場合,句読点や「」(かぎ)の使い方,段落の意味など表記に関する基本的な理解が必要となる。小学校段階でこれらを習得させるには,視写が有効であると思われる。文章の表記方法は,児童生徒が使う教科書に準じる。教科書と同じ文字数・行数の書式にした原稿用紙に教科書に記述されたとおりに書き写させる。これが,視写と呼ばれる指導方法である。間違いなく書き写すことにより具体的な表記方法を身に付けさせることができる。
 様々な書式でプリントを用意しなくても,ワープロを使えば自由に変更できる。視写したデータは,フロッピィディスクに保存したり,プリントアウトしてファイルに綴ったりすることができる。ワープロの文字入力や編集操作指導と合わせて視写を行なえばより効果的である。
 ローマ字入力を導入する際,児童にとって負担が大きいのではないかという意見がある。町内K小学校におもしろい実践報告がある。4年生がローマ字を一通り習い終わった後,ワープロで「KA」と入力すると画面に「か」と表示されるのをみて,非常に不思議そうにしていた。「SA」と入力すれば「さ」とかなに変換され,「かさ」という文字ができる。この調子で子ども達は「あ」から「ん」までの言葉を,ローマ字一覧表を見ながら一つひとつ興味深く確かめていた。「A」と入力すればコンピュータからかな文字に変換された「あ」が表示される。働きかければ瞬時に応答が得られるインタラクティブ(相互作用性のある)な学習が,子どもたちには魅力的だったのであろう。意外な展開に授業者自身が戸惑ったということである。5年生以上の児童に改めてローマ字入力を指導するには,使用するワープロソフト対応のローマ字一覧表を参考にさせれば,それほど苦労することなくマスターできるようである。
(3)指導上の留意点
 日本語入力を指導する上でいくつか留意点がある。先の「ワープロ作文技術」に引用したように,キーボードに慣れると文字入力の負担が非常に少なくてすむ。そのために基本的なタイピング練習を行うようにしたい。ローマ字入力に移行する5年生に集中的に「美佳のタイプトレーナー」(フリーソフト)等を用いて指導する。
 かな漢字変換には,一つひとつの漢字を変換する「単漢字変換」と,かな漢字混じり文を変換する「連文節変換」がある。小学校高学年くらいからは,連文節変換で文書作成ができるようにしたい。例えば,「つぎのじゅぎょうはりかしつでおこないます」と入力し,変換キーを押すと,「理過失で実験をします」となることがある。これは,コンピュータが「過失で実験をします」と自動的に文節の区切りを判断した結果である。HYPERcube2では,現在の文節は水色で表示され,ROLLUPキーとOLLDOWNキーで移動します。→キーまたは←キーでひらがな表示に戻し,黄色反転部分を左右に伸ばしたり縮めたりする。この場合「りか」で1文節になるように黄色反転部分を調整し,再度変換キーを押す。「理科」と希望する漢字に変換され,次の文節に移動するには↓キーを押す。このような操作を繰り返して正しい文字を入力する。その他,一度変換が行われると,使用した漢字の順に並び替えられ,次に変換するときは候補群の最初に表示される。この「学習機能」とともに「単語登録」も必要に応じて活用すれば,効率的に文字入力ができるので思考に集中で きる。
 文章を推敲し編集する場面で,文字や文章を削除したり追加したりする必要がある。そのとき,「挿入モード」と「上書きモード」で文字入力の形態が変わるので,モードの意味理解と現在のモードの確認方法を早い段階で指導しておく方がよい。また,2行を1行にしたり1行を2行にしたりする編集作業には,改行マークの意味を理解しておくことが求められる。文書を作成するごとにファイルは保存するように習慣づけたい。ファイル名は半角文字で8文字以内でつける等のMS−DOSに関する知識と,「見出し」はそのファイルの内容が分かりやすいようにつけるものであり特別な制約がないことを,最初から繰り返し指導し,確実に保存できるようにしたい。HYPERcubeJrは小学生用に作られたワープロなので,ファイル名は番号で自動的につけられる。
 中学校段階では,これらの基礎的知識・技能を発展させ,ワープロを清書道具としてだけでなく思考活動を支援する知的ツールとして自由自在に使いこなせるようにしたい。
(4)データベースでメモを生かす
 生活作文を書くのであれば日々のできごとや心に残ったことなどをメモ形式でデータベースに記録する。「いつ」「どこで」「だれが」「何を」「心に残ったこと」などを項目にしたデータベース・カードに記入していく。1週間なり1ヵ月なりある程度蓄積された段階でカードを見直し,生活作文の構想を練る。HYPERcube2は表形式でもデータが表示できるので,いくつものカードを一度に確認することができる。
 また,作文の題材選びには,検索機能が有効である。例えば,「ドッジボール」という言葉をキーワードにすれば,「ドッジボール」に関連したカードが選び出される。ある条件で検索されたもの,検索していない状態ではすべてのカードを,文書ファイルとして書き出すことができる。書き出されたメモをもとに生活作文に仕上げていく。ワープロは編集機能が充実しているので,メモをうまくふくらませて文章にしやすい。いくつかの文章をまとめて段落とする。全体の構想を考えながらこれらの段落を配置する。行単位や段落単位など任意の範囲で簡単に移動できる。

4ビジュアルな文書−プレゼンテーション作品
 
学習活動や委員会活動などで,ワープロによる文書だけでなく表計算・図形処理・データベースの各システムを有効に使用し,ビジュアルなプレゼンテーション作品作りにも挑戦する。単元終了または学期末,それぞれの成果を体系的にまとめるには,cubeProjector(以下,Projectorと略す)を活用したい。機能の概要は以下の通りである。
(1)HYPERcubue2の図形処理ソフト(キューブペイント)で作成されたグラフィックデータを編集してプレゼンテーションを行う。
(2)作成されたストーリーデータに基づいて次々にグラフィックデータを表示する。
(3)グラフィックデータ転換の待ち時間を設定したり,リターンキーの入力を待って次のデータに移るなどの機能がある。
(4)表示効果としてカーテン・スクロール・ブラインドなどがあり,絵を重ね合わせて表示することもできる。
(5)その他,簡易アニメ機能,マーキングや文字の入力もできる。Projectorの操作環境は,HYPERcube2と統一されているので,子どもたちには扱いやすい有効なプレゼンテーションツールとして活用できる。