「何秒?」

データベース・プレゼンテーション/活用例

’93自作教育ソフト年鑑(学研)実践事例
<体験ソフトとしてプログラムデータ添付>
’92「NEW教育とマイコン」12月号掲載

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1 システム開発のねらい

  現代社会は,絶えず膨大な情報を生み出している。この傾向は,今後さらに強くなると予想される。21世紀をたくましく生きるために,この社会の変化にどう対応するのか,学校教育でつけておかなければならない能力とは何かが問われている。そこで,児童が課題を解決する時,他を頼ることなく,自力(時には学級集団)で努力できる子どもを育成していきたい。自主的,意欲的に努力するためには,課題解決に対する方法と結果の見通しが不可欠である。解決の方針が立てば,「さあ,がんばろう」と意欲が湧いてくる。思考力(見通しをもって,筋道を立てて考える力)を高め,様々な活動を通して達成感を味あわせることが,重要となる。
  集団思考は課題に対する意見や考えを深め,個人の思考力を高めることができる。集団思考に臨む前の個人思考を充実させるための方法としてパソコンを「データベース」的に活用する。また,集団思考の場面では,プレゼンテーションとして利用する。

2 授業での位置づけ

 フリーソフトKiTEDを使って植木算を「投入れ教材」的に扱った。植木算の問題を解決しながら,対応の考えを養うことを目標に置いた。「1階から3階まで止らないで昇ると,12秒かかるエレベータがあります。このエレベータで1階から7階まで止らずに昇ると何秒かかりますか?」という課題に対して,様々な解答が出されると予想される。正解にも3つの考え方があり,その他,誤答もいくつかある。この問題で,いくつもの考え方や解答を比較検討し,よりよい解決方法を見出していこうとする意欲を育てるとともに,多様な考えを追求する楽しさを経験させたいと願った。 

3 実際の活用例

 本校(前任校・西細川小学校)のように少人数学級であったり,意見が出にくい学級では,集団討議によって考えを練り上げていくことがむつかしい。そのため,児童が解答を出した後,5種類の解答と考えをパソコン画面に提示する。画面には,「さち子」「あきひろ」「としひこ」「まみ」の4人が登場し,それぞれ28秒,36秒など解答を示している。児童は,パソコン画面の4人とあたかも教室に一緒にいるように,それぞれの意見をパソコン画面から読み取り,自分の考えと比べる。このように他の意見や考えと比較検討する集団討議の不足を,パソコンに予め予想される考えを入力しておくことによって,いくらかは補えるのではないかと考えた。
  パソコンの操作方法しては,「さち子−28秒」と表示されているところにマウスを移動させクリックすれば,式の説明と線分図が同時に提示される。例えば,児童と同じ解答を示した「さち子」にその考え方を確かめる。解答が同じであっても考え方に違いがないのかも確認する。その後,「あきひろ−36秒」「としひこ−2  4秒」「まみ−36秒」の考え方についても検討し,自分なりの結論を出す。パソコンを「データベース」的に活用する。
 個人思考が終わり,意見を発表し,集団で討議するときは,考えのプレゼンテーションとして活用する。児童は,個人思考での考えをパソコン画面を提示しながら意見を述べる。また,集団討議で表現が不十分なために発表しても他の児童に理解されにくいことがよくある。こんなとき,予め予想される考えをプログラムしておき,その児童に合せて,教師が図やシミュレーションなどを提示すれば,発表した児童自身にとっては考えの確認となり,他の児童にとっては有効なプレゼンテーションとなる。
  児童から「その他の意見」の考え方がでない場合は,教師から提示する。パソコン画面上の4人の解答には正解も誤答もある。集団討議で正解が確かめれた後,よりよい解決方法を見出していこうする態度も養っていきたい。 
 以上,個人思考・集団思考,両面での活用法について述べたが,実際の授業では,学級の実態を考慮して,どちらか一方にした方がよいのではないか。


4 問題点と今後の課題

  先の「データベース」的活用をした授業での反応として,ある種の戸惑いがあったようである。日頃,教師と数名あるいは1名の児童との授業で,いくつもの意見や考えを聞き自分の考えをたたかわせる学習方法に慣れていないためであると思われる。だからこそ,今回のようにパソコン画面に友達を何人も登場させ,その子たちと討議させることは大切であると感じた。
  教材作成をKiTEDで行なう利点の一つに, 写真や図形などを自由に表示できることがある。しかも,図形ファイルを圧縮したり部分的に切り取ったりできるので,メモリの節約ができる。図形ファイルを連続的に表示して,アニメ化もできる。これらの特徴を,授業のどの場面で,どういう画面に設定するかが,アイデアである。
  今後,音声や3次元図形などを扱えるようになれば,さらに活用場面が広がるのではないかと思われる。