三重県かんきつ生産者 大会意見発表

平成10年9月13日、御浜町の中央公民館で、三重県かんきつ生産者大会 が開催されました。
農家の若手主婦を代表して、植村恵子さんが意見発表しましたので、その内容 をここに掲載します。


「やりがいのあるみかんづくりを求めて」

  植 村 恵 子 (御浜町下市木)
私は、この御浜町で夫、そして夫の両親と一緒にみかん作りをして いる植村恵子です。
極早生、セミノール、伊予柑、サマーフレッシ ュなど250aを栽培しています。
生まれたときから、サラリーマンの家庭に育ち、農業を何も知らず に、隣の町、紀和町からお嫁に来ました。
みかん作りは、三人の子 供の手が離れるようになってから、少しづつ手伝うようになりまし た。

今もいると思うのですが、私が子供の頃、御浜町の人がみかん を売りに来ていて、私の家でも大きな箱にいつもたくさん買ってい ました。
私の父親はみかんが大好きで、家では、冬になると東京オ リンピックの時にはじめて買った白黒テレビを見ながら、コタツに 足をつっこんで箱から出した山盛りのみかんを、手が黄色くなるま で食べたものです。

現在の家庭はテレビも暖房も自分の部屋にあっ て、家族みんなで一つのコタツに入ってみかんを食べることも少な くなったような気がします。

(防除の機械化)
若い頃は、みかん作りの大変なことも知らず、食べることしか頭の 中にない私は、少しづつ畑に出て手伝うようになって、防除、摘果、 草刈り、かん水など、いくらでも仕事があるんだということを知り ました。
中でも、暑い時期の防除は大変で、辛く、国営パイロット のみかん園では、二日も三日もかかって、一本一本手で防除作業を していました。

作業中、暑さのために気分が悪くなって、飲んだお 茶を戻してしまったり、立ち眩みでフラフラすることも何度かあり ました。
それまでの防除は、両親にも手伝ってもらって、三人で散 布し、一人がホースを引っ張る役目をしていましたが、両親も年齢 的にきつくなって、本当に大変な作業でした。
そこで、家族でよく 話し合って「スピード・スプレヤー」略してSSの導入を決断した のです。おかげで、昨年から、国営パイロットは、半日で防除でき るようになりました。

SSは高価な機械でお金がかかります。それ に、SSを通すためにみかんの木を切らなくてはいけないのでその 分収入も減ってしまいます。
でも、防除が楽になったこと、さらに、 収穫などの時間も短縮されました。
でもやはり一番うれしいのは、 夫、両親そして私の体が楽になったことです。

私はSSを導入して 良かったと思っています。
全部の園地にSSを入れることはできま せん。
手で防除しなければならない園地もあります。そのような園 地では、スプリンクラーを付けて防除をしたいと考えています。

(みかん作りと子育て)
私達には、三人の子供がいます。女の子、男の子そして女の子です。
息子は今年高校に入りました。
入学したとたんに、日曜日になると、 「仕事があったら手伝うよ。」と言ってくれるようになりました。
親に対しての感謝の気持ちから「手伝うよ。」と言ってくれたのか と思ったら、高校生にもなると小遣いももう少し欲しいらしく、 「バイトやけどね。」とあっさり言われてしまいました。
息子は、 進路を考えるときに、家から離れた農業高校へ行こうか、近くの高 専にしようか迷っていましたが、結局、高専に進学をしました。
私 は、息子が小学校の頃から思っていたことがありました。
それは、 御浜町は「年中みかんのとれる町」をキャッチフレーズにしている のだから、地元の高校に一クラスでも、農業専門コースがあればい いのに、ということです。

そのことをずっと思っていたのですが、 何年か前に農業関係の人にそのことを話したら、「子供の進路 は、高校を卒業して大学へ行くときに考えればいい。
その時農業の 方へ進みたい子は農大へ行けばいいんだから、高校の農業専門コー スは必要ない。」と言われ、ちょっとショックを受けました。でも、 その思いは今も変わっていません。

高専に進学した息子には、息子なりの将来の夢があると思います。
私達は、農業を継いで欲しいと思ったら、どのようなみかん作りを していけばよいのか考えました。
一つは、自然を相手に生き物を育 てることの喜びや優しさ、そして農業が好きなんだと言うことを伝 えること。

二つ目は、家族の将来の生活設計に基づいた計画性のあ る営農の推進。特に労働と休養のバランスのとれた働き方や安定し た収入を得る努力をすること。
三つ目は、ここには、喜びや苦労を 分かち合える大勢の先輩や仲間達がいるんだ、ということを理解し てもらうことです。

将来、息子にお嫁さんを、と思ったときに、相手の立場に立って考 えると、やはり安定した収入があることと、息子自身の人間性が大 切だと思います。
母親の私が、生き生きと農村生活をおくり、時々、 友達や夫と食事に行ったり、旅行したり、遊びに行くことも、子供の 農業に対する思いを育むことにつながるのでは、と思います。

(グループ活動と仲間づくり)
農業婦人って、農業をしていない人には、いつも汚いカッコをして、 朝早くから夜遅くまで、畑で仕事ばかりしているように思われてい るのではないでしょうか? そんなことはありません。

外出すると きは、みんな素敵なカッコをして、まるで別人のようです。
農業婦 人を感じさせません。
仕事はその時期に合わせて、自分のペースで 自分で時間を決めることができます。
私の回りの先輩や友達は、趣 味もたくさん持っていて、読書家で、農業経営についてもとても熱 心に勉強しています。

私もそういう人たちに憧れ、少しでも追いつ きたいと思っています。
私は、時々三重県内の生活改善グループの 交流会で津の方へ出かけることがあります。
交流会に出席してみる と、三重県の北中部では、農業をしている若い奥さんがとても多い ことを知りました。桑名、四日市、鈴鹿、一志、松阪、伊勢、志摩、 伊賀には、若い女性の担い手組織があり、農業担い手女性のネット ワーク化を進めています。

共同経営としての経営参画能力を磨く研 修会や相互交流を行っていて、海外研修やインターネットの活用な ど、時流をとらえた活動を行っている組織もあるそうです。
このよ うな組織に参加できるのは、もちろん女性のやる気が大切ですが、 ご主人の理解と協力があってこそだと思います。

私もいろいろなと ころに出させてもらいました。
夫に「仕事もせんと、そんなとこば っか行きたがる。」と時々言われますが、内心は理解してくれてい るようで、感謝しています。
私の楽しみは、アートフラワーと踊り、 生活改善グループの仲間との集まりです。
私達のグループは6人で、 今は共同栽培による野菜づくりと「はつらつ女性ゼミ」での農業経 営、農業簿記、生活設計などの勉強に取り組んでいます。

御浜町生 活改善グループは7つのグループがあり、毎年県内外に視察研修に 出かけ、今までに、朝市や花づくり、加工品づくり、観光農園など その地域地域で、農業婦人の活動話を聞かせてもらってきました。

いつも女性の力ってすごいなと感心させられます。
そして、女性を 対等の共同経営者として、男性が認めていることを感じとれます。

私もいろんなところに出かけるようになって、グループの先輩方や、 その他大勢の方とあいさつができ、話ができ、ありがたいと思って います。
仲間とのふれあいで、自分が少しずつ優しくなってきたよ うな気がします。
家に帰って、その日あったことは、話さずにはい られない性格で、家族にしゃべります。

家族に仲間との活動を少し でも理解して欲しいとの気持からです。
ただ、家族はちょっと迷惑 しているところもあるようです。
私の勝手な考えですが、母親はお しゃべりでいいと思っています。

父親と子供の架け橋になっている のが母親だと思います。
中学生、高校生になると、「親としゃべら なくなる。」とよく聞きますが、私の家族はよくしゃべる方だと思 います。
時々、悩みや問題も起こるけど、「家族っていいな。」と いつも思います。

(消費宣伝活動に参加して)
息子に農業を…。そして安定した収入と、お嫁さんが欲しい…。私 達夫婦の老後の生活の安定を…。

などと考えると、いくら明るく、 楽しく、子供も手伝ってくれて…、というようなことだけでは生活 はしていけません。
消費者の方にたくさんみかんを買ってもらって、 たくさん食べてもらわなくてはなりません。

今年の4月、JA三重南紀が、農業婦人による消費宣伝を名古屋地 方で行いました。二人一組でスーパーの店頭に立ち、消費者の方々 に中晩柑のセミノールやサンフルーツの試食をしてもらいました。
消費者の方々には「甘い? むきやすい? 無農薬?」など色々な ことを質問されました。

その時は、「甘いだけではみかんは美味し くないんですよ。」とか「無農薬ではみかんはつくれません。
でも このみかんは安全ですよ。」とか、自分なりに考えて答えました。

「私達が作ったみかんです。」と言うと、関心を持ってくれる人も いました。
店頭で、消費者の方と話ができたことは、これからの私 達にとって大変良かったと思っています。
畑でみかんを作っている だけでは、消費者の意見を耳にすることはできません。
そのスーパ ーで、近寄ってきたおばさんが、隣にならんでいる熊本産のデコポ ンを指して、「どれがおいしい?ちょっと選んで。」と言われ、選 んであげました。

私達は三重南紀みかんを試食してもらうために行 ったのに、三重南紀みかんの前に立っていても消費者の方には、全 部のみかんを売っているように見えるのでしょうか? どこの産地 のみかんなのかということなどはあまり関係ないようです。

一番ビ ックリしたのは、輸入物のグレープフルーツやバレンシアオレンジ がよく売れていることでした。
若い人から老夫婦、妊婦さんまで買 っていくのです。
「国内産みかんは安全です。ちいさなお子さんに は、安全な物、自然の物を食べさせてあげて下さい。」と言って、 国内産みかんを食べてもらうように、声を張り上げて宣伝しました が、輸入物は本当によく売れていました。

三重南紀みかんは日本一 美味しいと自信を持っている私にとっては、大変ショックな出来事 でした。
市場の方から、「他の産地の人は、女性の方もよくこちら に来て消費宣伝をしていますよ。」と言われ、消費宣伝に初めて行 った私は、私達は遅れているのかな、とも思いました。

これからは、 売れるのを待つだけでなく、品種ごとに店頭販売を行って、試食を してもらうことが「三重南紀」を消費者のみなさんによく知っても らうために必要なことだと思います。

私達が自信を持って育てたみ かんが、どれだけの評価を得ているのか、自分の目で見て、聞いて、 他のくだものも食べて、これからのみかん作りに役立つ勉強をして いきたいと思います。

生産者婦人の私達が、都会の主婦に心をこめ て売りたいと思います。今の若い人たちは、甘くも辛くもないよう な物を好んで食べ、味覚がだんだんおかしくなってきているという ことを聞いたことがあります。
これからの若い人たちに、健康、安 全、安心を考えてもらうためにも、農業をしている私達は、どう伝 えていけば良いのか、これからの課題ではないでしょうか。

(将来の希望)
私は、幸いなことに、家族の理解のもとで、自分の思うことをさせ てもらっています。
今後も、農業経営を行って行くにあたって、夫 の良き相談相手となれるよう栽培技術や流通販売の知識、経営企画 力をしっかり学んで行きたいと思っています。

単なる労働力提供者 としてだけではなく、安定した所得と、充分な休養、休日が保障で きるゆとりある農業生活を、夫とともに築いていけるパートナーと しての役割を果たせる女性を目指したいと思っています。
また、仲 間や先輩の指導を得るためにも、積極的に地域社会に参画し、自分 の考えを持った女性、自分の意見を言える女性として努力したいと 思っています。
私達は、これからも自信を持って農業をしていきま す。そして私は、東紀州に早く高速道路を延ばして欲しいと思いま す。

都会からもっと近くなって、大勢の人が東紀州を訪れ、美しい 海と、私達が自信を持って育てた美味しいみかんを味わってほしい と思っています。

最後に、農業改良普及センターの先生方、御浜町農林水産課、JA 三重南紀のご支援、ご協力をこれからもよろしくお願いします。

と りとめのない話でしたが、最後までお付き合いいただきありがとう ございました。
三重県内のみかん生産者のみなさん、これからもが んばりましょう。


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