◎増え続けるクジラ、減る魚・・・
このままでは海の生態系さえ危ぶまれていますが、増え続けるミンククジラの1日も早い捕鯨再開を願う我々が、このページを通じて捕鯨とクジラについて正しく理解していただきたいと思い、財団法人日本鯨類研究所及び日本小型捕鯨協会の資料を基に編集させて頂きました。
太地漁港所属の勝丸
○日本の小型捕鯨
◇社会・経済・文化的重要性をもつ沿岸小型捕鯨

日本では9,000年前より沿岸で鯨類を利用する歴史・文化を持っています。現在でも捕鯨は地域共同体の中で、社会・経済・文化的に重要な意味を持ち、米国やロシアの先住民捕鯨と同様の性格を多く含んでいます。ところが、1988年に日本国内でIWCの商業捕鯨モラトリアムが実施されて以来、小型捕鯨地域では、それまでの主な捕獲対象種であり、今でも資源量の豊富なミンククジラの捕獲が行えなくなりました。現在は、IWCの管轄外のツチクジラ、ゴンドウクジラ、ハナゴンドウクジラの捕獲を日本政府の管理下のもとで細々と行っていますが、ミンククジラの捕獲再開は小型捕鯨地域の悲願です。
沿岸小型捕鯨の年間捕獲枠はツチクジラ62頭、コビレゴンドウ100頭、ハナゴンドウ20頭と厳しく制限されています。
○捕鯨の伝統と文化を考える
◇クジラとともに生きてきた日本人

先史時代から現在にいたるまで、日本の長い歴史の中で捕鯨を通じて信仰が生まれ、また唄や踊り、伝統工芸など多くの捕鯨文化が実を結び、伝承されてきています。これこそ、日本人がクジラとともに歩んできた歴史の証ではないでしょうか。今、日本が誇るこの捕鯨の伝統と食文化の大切さを再認識する時代にきています。
・中世・近世の捕鯨
−捕鯨技術の進歩と普及−
12世紀頃になると、積極的に船をこぎだし、銛で突く「突き取り式捕鯨」が生まれます。江戸時代に入り、1606年に和歌山の太地で日本最初の捕鯨専業組織「鯨組」が設立され、組織的な捕鯨が始まります。さらに1675年には「網取り式捕鯨」が開発され、この捕鯨方法が土佐、長崎などへ広がり、クジラの捕獲量を一挙に増加させることになります。
○IWCが管理している鯨類
IWCが管理対象としているのは、全世界で約80種いる鯨類の中で、シロナガスクジラ、ミンククジラなどの大型鯨類計13種。それ以外の鯨類は対象としていません。日本では現在、IWCの管理対象とされないツチクジラやゴンドウクジラを捕る小型捕鯨と、イシイルカなどを対象とするイルカ漁業が、国や自治体の管理下で行われています。
大型鯨類
シロナガスクジラは地球上で最も大きな動物で、体長は34メートルにも達した記録があります。10歳前後で成熟するメスは、2〜3年に1回出産します。ミンククジラは6〜7歳で成熟し、ほぼ1年に1回出産します。他の鯨類に比べ強い繁殖力もっているため、持続的に利用できる豊富な資源です。
・シロナガスクジラ
体長は25m以上になり、体重100トン〜150トン、過去地球上に生息した生物の中で最大の生き物です。南氷洋のシロナガスクジラは、ほとんどオキアミだけしか食べず、増え続ける南氷洋のミンククジラも魚以外にオキアミを食べるため、絶滅状態からの回復が遅れていると言われています。
・ナガスクジラ
体長は20m、体重45〜75トン、シロナガスクジラについで大きな生き物で、亜熱帯から極地にかけて広く分布しているが、赤道付近ではほとんどいません。南北両極での交流はなく、北太平洋と北大西洋でも別の個体群がいる。
・ホッキョククジラ
体長は15m前後、体重は50〜100トン
・セミクジラ
体長は15m前後、体重は40〜80トン、 セミクジラは昔から日本の絵に描かれていたクジラであり、背の曲線の美しさから「背美鯨」という名前がつけられた。動きが遅いので肉、油、クジラヒゲ目的で乱獲され現在では捕獲が禁止されている。
南半球に生息する「ミナミセミクジラ」と北半球の「キタセミクジラ」に分かれ、上あごの先にボンネットというこぶ状の隆起があり、これによって個体識別が出来ます。また、V字型のブロー(潮吹き)が特徴です。
・イワシクジラ
体長は15m前後、体重は15〜25トン、ナガスクジラより小さく、ニタリクジラより大きいイワシクジラは他種と同様、体は流線型で、くちばしは幅広で平らなU字型です。噴気孔からくちばしの先端にかけて縦に走る顕著なうねがあります。
・マッコウクジラ
体長は15〜20m前後、体重は40〜50トン、 マッコウクジラはハクジラの中で最も大きく、歯のある動物では世界で最大で、マッコウクジラの巨大な頭および特殊な形はクジラの典型的な例である。
マッコウクジラの頭部は、クジラ類の中でも例外的に非常に巨大で、特にオスでは、その体長の3分の1に達する
和名のマッコウクジラの由来は、まれに腸内にから発見される瘤(こぶ)から、竜涎香(りゅうぜんこう)とよばれる抹香に似た香りのする香料が採れるためです。頭部の形状が特徴的で、クジラの絵を描くときのオーソドックスな形として親しまれています。
・ザトウクジラ
体長は15m前後、体長は25〜35トン、尾びれの裏側の模様で個体を識別でまする。胸びれは長く、季節にともなって回遊し、アラスカのものは冬は出産と育児のため、ハワイなどの暖かい海へ移動します。オスは繁殖期に「歌」をくりかえし歌う事が知られています。 潮吹きを3〜4回した後に潜水する。
・コククジラ
体長は15m前後、体重は14〜35トン、頭は上から見ると三角形で、上顎はセミクジラやホッキョククジラの顎のラインと比べると少々アーチ型になっています。胸びれは広く、パドル状です。コククジラはセミクジラのように背びれがありません。
・ニタリクジラ
体長は15m前後、体重は25トン前後、イルカのような美しい鎌形の背鰭をもっていて、スマートな体つきは、水中生活に極限まで適応した流線形で、クジラらしいクジラでです。外見上の特徴は、鼻孔前方から吻(ふん)端に向う3本の稜線でです。
ニタリクジラは大きな群れはつくらず、通常単独か2頭で行動しています。海水温度20℃以上の温暖な水域を好み、熱帯から温帯海域に生息します。他のナガスクジラ類は南北回遊を行いますが、ニタリクジラは定住性が強く季節的な回遊は行わず、餌生物の移動に伴う小規模な回遊を行う程度と考えられています。ニタリクジラは、かつてイワシクジラと混同されていました。「ニタリ」というのは、イワシクジラに似ているところからつけられたものです。
・ミンククジラ
体長は10m前後、体重は5〜8トン、ナガスクジラ類では最小の種で、おもに外洋性で回遊をします。水にもぐるときに体を大きく曲げるが、尾びれを水上にもち上げたりはしません。周波数80Hz〜20kHzのパルス音やクリック音、ブーブーという声などを発してコミュニケーションをすることが知られています。

小型鯨類(IWCの管理対象外)
ツチクジラ、ゴンドウクジラ、その他多くのイルカ類を小型鯨類といい、IWCの管理外です。イルカとは普通、体長4メートル以下の鯨を指します。
ツチクジラ
体長は9〜10m、体重9〜10トン、北太平洋、日本海、オホーツク海、ベーリンク海にしか生息しないので和歌山県太地沖では見ることはありません。。全体的に灰黒または灰茶色で、腹部はやや薄い。「おでこ」と長いくちばしが特徴で、かなり深く長時間潜水する。通常30〜50分。餌はイカ類や底生魚類が主である。
日本政府管轄の下、許可されて北海道を中心に捕獲されています。

ゴンドウクジラ(マゴンドウ)
体長は4〜5m、体重は2〜3トン、体色は黒または黒褐色。頭が樽型で丸く大きく、くちばしがない。通常15〜40頭くらいで行動します。 世界中かなり広く分布していますが、日本近海では銚子から沖縄にかけて生息し、北海道の太平洋岸から銚子にかけてはタッパナガと呼ばれるマゴンドウと同種が生息します。

日本政府管轄の下、許可されて太地や和田を基地として捕獲されています。
(尚マゴンドウは太地の追込み漁や沖縄においても捕獲されている)

ハナゴンドウ
体長は2〜3m、体重は1〜2トン、
体色は黒褐色で、くちばしはない。通常50頭以下で行動するが、100頭以上の群を作ることもある。 温帯から熱帯にかけて幅広く分布。日本の太平洋岸沖合でもっとも頻繁に出現する。
日本政府管轄の下、許可されて太地を基地として捕獲されています。
(尚ハナゴンドウは太地の追い込み漁においても捕獲されている)
○クジラは増えている−深刻な漁業との競合問題−
◇主なクジラの資源量の変化
機械油や食用油として利用され、大型で鯨油生産効率が高かったシロナガスクジラやナガスクジラは、1930年台初頭の南極海における乱獲により数が激減。未だに適正な水準まで回復していない状況にあります。
しかし、商業捕鯨モラトリアムの導入以来、多くの鯨類資源が回復し、利用可能な水準に達しています。その一方で、ミンククジラは小型故に捕鯨の主対象とならず、エサを競合するシロナガスクジラが減少したため、エサを十分にとることができるようになり、急速に繁殖し数を増やしました。
そうやって増えたミンククジラのために、シロナガスクジラへエサが十分に回らず、資源の回復が遅れているとの学説もあります。

◇南極海にミンククジラは76万頭もいる!
1986年の商業捕鯨モラトリアム実施は、1990年までに鯨類資源を包括的に推進し直すことが条件となっていました。IWCの科学委員会は、1990年に南極海にはミンククジラが76万頭、1991年にオホーツク海・北西太平洋には2万5千頭存在することに同意しました。さらに、1992年にIWC科学委員会は、南極海のミンククジラは毎年2,000頭の捕獲を100年続けても、資源に悪影響はないと試算しています。


◇JARPAから明らかになったこと

・南極海には若いミンククジラが多く生息している。

南極海のミンククジラの年齢構成を調べた結果、2から10才位までの若いクジラが多数生息していました。これは、ミンククジラ資源が健全に増加していることを示します。
・南極海ミンククジラには汚染物質がほとんどない。
内蔵や脂皮の分析によって、有機塩素化合物や重金属の蓄積がほとんどなく、各種有害物質の安全基準よりはるかに低いことがわかりました。南極海ミンククジラ肉は極めて安全な食品です。
・クジラの増加など多くのことがわかってきている。
調査によってミンククジラの他にもザトウクジラなどの各種のクジラが増加していること。

◇JARPN・JARPNUから明らかになったこと
・日本周辺のクジラは豊富

目視調査の結果、日本周辺の北西太平洋には各種のクジラが豊富に分布していることが明らかになっています。さらに、クジラを発見する頻度は年々高くなっています。2002年度の第U期北西太平洋捕獲調査では、多数の大型鯨類が発見されました。(沖合部/暫定報告)
・クジラは大量の魚を食べている
ミンククジラは5〜6月にはカタクチイワシを、7〜8月にはサンマを大量に食べています。また、道東の沿岸域では、スケトウダラも大量に食べています。ニタリクジラは8〜9月にはカタクチイワシを、マッコウクジラは5〜9月にはイカやサカナを食べていることが、胃の内容物調査で明らかになりました。また、1996年8月に行われた北海道太平洋域(7海区西側)での調査中に発見されたミンククジラの位置は、同時期のサンマ漁場とほぼ重なっています。

・北西太平洋のミンククジラの系群構造
捕獲調査のサンプルを用いた遺伝子研究の結果、7海区、8海区及び9海区のミンククジラは、O系群特有のハプロタイプであり、日本海に分布するJ系群とは明らかに異なる事から、太平洋側と日本海側には別の系群が存在する事がわかってきました。 
◇ミンククジラ捕獲枠要求
1991年のIWC科学委員会では、日本の太平洋沿岸に回遊するミンククジラの資源量は、2万5千頭と推定され、健全な資源であることが合意されています。
日本は、商業捕鯨モラトリアムによって困窮している、伝統的捕鯨地域社会を救済するために、モラトリアム導入以来、毎年IWCへミンククジラ捕獲枠を要求してきましたが、理不尽な反捕鯨勢力によって阻止され続けています。
本ページは財団法人日本鯨類研究所及び日本小型捕鯨協会の資料を基に編集しています。
 
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