寄せられたお便りから

あゆみさんからのバザー体験について

 これは拓也を支えてくださった和歌山県立那賀高校の卒業生、あゆみさんから
いただいたお手紙です。

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 初めまして。
「種まく子供たち」読ませていただきました。
 私は和歌山県立那賀高校の卒業生です。

1年生の時、生徒会活動をしていました。
拓也君は私のことを知りませんし、私も直接お会いしたことはありませんが、
拓也君は私の高校生活の中で一番の思い出です。
 だからこんな形で拓也君の名前が私の前に現れるなんて、本当にびっくりしています。

 初めて拓也君の名前を知ったのは、1997年の6月頃です。
私が生徒会役員になってすぐに行われた和歌山県の各高校の生徒会役員総会に
出席した時のことでした。
 何をするのかも分からなくて、とにかく緊張していた私に配られてきたちらしには拓也君の病気のことや、様々なことが拓也君の写真といっしょに載せられていました。

 そのちらしで、私は、初めて小児ガンという言葉を知りました。
私はもっと小児ガンや拓也君のことについて情報を得たいと思い、インターネットや新聞などで調べたところ、拓也君の病気がとても難しいものだということを、改めて知りました。

そして拓也君のために何か私たちが協力できることはないかと考えた結果、「拓也君を支援するバザー」を開こうということになりました。
 バザーに向けて私たちが活動し始めたころは、学校の生徒に呼びかけても反応はあまり良くなくて、全校集会で先生方から時間を頂いて小児ガンについて話をしたり、クラスに何枚も生徒会通信を配布したりして、協力を求めました。

 また高校のある岩出町や自分たちの住んでいる近所の人たちにも協力して頂けるように活動しました。
 多くの人々に、拓也君の病気のことを知ってもらいたかったからです。

 実際、夏休み中の活動はとても大変だったけれど、私たちは「拓也君はもっと頑張っているんだ」というのを合言葉に頑張ることができました。
 そして、拓也君の存在は、私たちの強い支えになりました。 「拓也君のために」と活動していた私たちでしたが、いつのまにか拓也君が私たちの支えになってくれていたのです。

 ただ1つ残念だったのは、バザーの直前に拓也君が亡くなったことです。
私の中で、「拓也君は絶対元気になる。バザーが終われば必ず会える」というような
気持ちが強すぎたのかもしれません。でも、私にとって拓也君の死は、今まで支えて
くれていたものが、崩れおちたような、そんな感じでした。

こんなこと、律子さんにお話しするなんて、失礼ですよね。すみません。
 でも自分でも気付かないうちに、拓也君のバザー活動が、私にとってとても大きなものになっていて、私の生活の大部分を占めていたんだと、今、落ち着いて考えてみるとそんな気がします。

 私が人間の「死」というものについて初めて深く考えさせられたのが、このときです。
 拓也君の死は、それほど私には大きなことだったのです。

 律子さんから高校にお礼のお手紙が届いた時は本当に嬉しくて、何度も読み返してしまいました。
 私たちのしたことが本当に拓也君やご家族のみなさんに少しでもお役に立てたのかどうかは分かりませんが、本当に嬉しかったです。
 ありがとうございました。

 あれからもう4年がたつんですね。
 今でも私の記憶の中には、あのころのことが鮮明に残っています。
 だからこんな形で拓也君と再会できるなんて、本当にびっくりしました。
 私がこの本のことを知ったのは、「3年B組  金八先生」の中で取り上げられた時に、「拓也君」の名前が聞こえたからです。
 私は耳を疑いました。
 拓也君という名前はそんなにめずらしい名前ではないし、と半信半疑だったのですが、苗字が佐藤だということがわかり、確信しました。

 この本を読んで初めて拓也君の闘病生活がどのようなものだったのかを知ることができて、読みながら拓也君の心のかっとうや、強さとか、様々な思いに、私も心の底から何かこみ上げてくるものを感じて、涙がこぼれました。

 私は1年間、インドに留学していたことがあって、そのとき、貧しくて栄養失調に
なり、路上で命を失っていく人や子供をたくさん見ました。
 拓也君のことも、この本に登場される他の6名の方たちのことも、インドの貧しい人々も、すべて含めて「いのち」というものについてとても考えさせられました。
 日本では当たり前のように「生」をうけて、70歳や80歳まで生きることが当然のように考えられています。

 でも拓也君のように、若くして尊いいのちが失われることも少なくありません。
 それぞれ形は違いますが。
 私は人は何か使命を果たすために生まれてくるのだと考えています。
 そしてただ生きているだけではなくて、自分の「生」に意味を持って生きていかなければならないと思います。

 拓也君を始め、多くの人々の死を通じて様々なことを感じ、
多くのことにつて考えさせられました。
 この本を通して拓也君と再会できたことに改めて感謝しています。
 本当にありがとうございました。(2002年)




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